介護福祉士の業務
そもそも、介護福祉士とは、日常生活が困難な人に対して、能力に応じて少しでも自立した生活が送れるように、入浴や食事などの介護を行ったり、その人やその家族の介護者に介護に関する相談や指導を行う介護の専門家です。また、ホームヘルパーなどの指導も行います。
その他にも、身体の介助、地域社会の活動への参加を援助したり、家族や近隣との対人関係の調整、余暇活動を支援したりと高齢者や障害者の総合的な介護支援活動を行います。その最も根底にある思想は、高齢者や障害者の「日常生活のQOLを高める」ということです。つまり、介護を必要としている人の生命の安全と人権を守り、その人が自立した生活が送れるように、そして、その人の持っている能力を最大限引き出せるように支援することです。
しかし、介護福祉士は医者や看護師ではないので、点滴や注射などの医療行為をすることはできません。生活を支えてあげることが仕事です。
介護福祉士は、ホームヘルパーの資質向上を目的として、1987年の「社会福祉及び介護福祉法」制定と同時に誕生しました。
さらに2007年(平成19年)に、この法律の一部が改正され、業務内容が従来の「入浴、排せつ、食事その他の介護」から、「心身の状況に応じた介護」となりました。そこで義務規定として「個人の尊厳の保持」「自立支援」「認知症等の心身の状況に応じた介護」「他のサービス関係者との連携」が追加されました。
なお、働く場としては、老人福祉センターや特別養護老人ホームなどの老人福祉施設、身体障害者厚生施設や授産施設などの障害者施設、介護支援活動のための高齢者の自宅などが挙げられます。
では、具体的な仕事内容を見て行きます。
1、食事介助
利用者ひとりひとりの摂取状況を把握し、その人に合った食事介助を行います。また、QOL(Quality Of Life)の観点から言えば、自立支援、つまり自分自身で出来ることは、自分自身で出来るように支援していくという姿勢も重要です。自立支援を大切にし、食事の状況を確認しながら、利用者の好みや栄養などに配慮し、楽しく食事できる環境づくりをすることが大切です。
2、排泄介助
利用者の排泄を介助するにあたっての最大のポイントは、「羞恥心に配慮し、自尊心を傷つけないこと」です。
利用者を一人の人間として、尊厳を持って対応することがなにより大切なのです。利用者の自尊心を傷つけないことを最重要項目として、「安全」で「清潔」な排泄の介助を心がけます。思うように便意をもよおさない場合は、腹部をマッサージして排便を促すことも必要だったりします。排泄を手伝ってもらうことは、恥ずかしいし、抵抗があります。介助者としては、利用者の排泄パターンを把握して、苦痛のないように排泄を促すことが大切です。
3、入浴介助
利用者にとっては、リフレッシュ出来る一時であり、これを楽しみにしている利用者の方も多いです。利用者の体の状況にあわせて、入浴方法を考え、安全に入浴できるように援助します。
注意するポイントとしては、
・利用者の体調確認
・安全の確保
・適切な室温とお湯の温度
・適切な入浴時間
・入浴後の水分補給
などが挙げられます。
入浴には心身の緊張をほぐしてリラックスさせ、食欲増進や安眠導入などの効果がありますが、一方で体に多少なりとも負担がかかることも否めません。入浴前の体温や血圧など、利用者の体調確認には注意しましょう。また、入浴には生理的に以下のような意義があります。
・身体を清潔にすること
・血液循環を良くして、新陳代謝を促進すること
・心身の緊張をほぐして、食欲増進や安眠をもたらすこと
・床ずれや感染を予防すること
年齢や好み、障害のある部位など体調確認を入念にし、安全に、かつ清潔に、そして心身の緊張をほぐしてリラックスさせてあげましょう。
4、衣服の着脱介助
衣服を着替えることは、生活にメリハリをつける援助です。また身体に痛みや麻痺などがある場合は、着脱に配慮が必要です。衣服の着脱の際、室温を適温に保つことも大切です。室温は22~26度が目安と言えるでしょう。また、日常生活のQOLを高める観点からみると、ただ衣服を着替えるという行為だけではなく、衣服・衣類自体を楽しむ、おしゃれを楽しむという要素もあります。女性、男性、高齢者、障害者にかかわらず、おしゃれを楽しみたい。もちろん機能的には、通気性がよく安全性が高いものを選ぶ。そんな喜ばれる衣服の着脱介助を心がけましょう。
5、移動の介助
移動は、すべての行為の基本です。杖や車椅子などをつかって移動される利用者の安全に配慮したり、寝たきりにならないように、移動ができるように援助します。移動の介護については、
・利用者、介護者がともに安全であること
・利用者の同意が得られ、利用者にとって安楽であること
・利用者にとって不要な負担にならないように効率的であること
が大切です。
これは介護予防の観念とも共通しています。訓練のための訓練であってはならない。おかしな表現になりますが、移動のための移動であってはならないということです。つまり、寝たきりにならないように、移動ができるように援助することが、決して「苦痛」であってはいけないわけです。本来、身体を動かすというのは、たいへん心地のよい行為です。利用者の安全に配慮し、利用者にとって安楽であるように、楽しい移動の介助を心がけることが大切です。
6、コミュニケーション
介護を必要としている人とのコミュニケーションはたいへん重要なことです。
コミュニケーションの方法については、言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーション、という2つの方法がありますが、介護の専門家として以下の2点に注意する必要があります。
・粗野な言い回しや品のない言葉は、相手に警戒心を与えることになりかねないので使わない
・相手を尊重した言葉を正しく使い、静かで穏やかな声の調子で話していく
なによりも、思うように行動できない、思うように発言できない高齢者に対しても、尊厳を持った対応をすることが重要です。そして、介護を必要としている人とのふれ合いの中から、また、その家族とのふれ合いの中から「信頼関係」を築いていき、悩みや喜びを共感していく姿勢が大事です。
7、リハビリテーション
身体機能の維持のため、また日常生活の助けになる必要な機能訓練を、楽しみながらできるように援助していきます。
第一の目標は、身体機能の維持し、能力障害などを軽減させ、社会の環境に適応させることです。ここで注意したいのは、いろいろな側面があるということ。利用者一人ひとりにあった側面があるということです。たとえば主婦の場合は、家事という仕事をこなせる能力を回復することが目標になるし、もとの職業にもどれる能力を取り戻すのが目標になる場合もあります。身体機能の回復のみならず、社会的権利の回復や名誉の回復、精神的な復帰訓練など、本来、リハビリテーションとは非常に広い意味を持つ言葉です。また、本人が能力を回復しても、職場や地域、家族など周囲に受け入れる体制がととのっていなければ完全にリハビリテーションできたとは言えません。利用者の身体機能の維持・回復を目指し、地域社会も能力を回復した人を受け入れ、利用者を身体的にも精神的にも健康な状態に回復させていく。 そして総合的にQOLの向上を目指すことがリハビリテーションの最大の目的なのです。
8、レクリエーション
踊ったり、輪投げをしたり、歌を歌ったり、書道や手芸をしたりと、さまざまな趣味活動や季節の行事などを行い、いろいろな楽しみを提供します。レクリエーション活動には、身体機能や社会性などを維持・向上させ、利用者の自立支援も促す効果があります。さまざまな活動をすることで、本来持っている可能性を実感することにもつながります。介護福祉士には、レクリエーション活動の社会的な意義をふまえて計画を作成する能力も求められています。ここで注意したいのは、レクリエーション本来の目的、つまり「楽しさ」を忘れないことです。
9、ケアプラン作成
利用者がいま何を望んでいるのか。その課題を見つけ、利用者および、その家族と接しながらケアプランを作成します。利用者の方が、より豊かに生活できるように一人ひとりにあったケアプランの作成が重要です。
介護福祉士は、利用者とサービスを提供する介護事業者との間に立つ、とても大事な役割を担っています。もちろんケアプランの作成には、介護や医療の専門的な知識を必要とします。作成する際には、以下のポイントに注意しましょう。
・利用者と家族の要望をしっかり取り入れること
・家族の介護負担が軽減されていること
・利用日時や費用に無理のないこと
ケアプランを作成するにあたって最も大切なことは、利用者と、その家族の状況や環境をよく知り、利用者の立場に立って計画をたてると言うことです。
10、ケアカンファレンス
ケアカンファレンスは、ケアプランを作成するにあたって欠かせない仕事です。
利用者を援助する方法について、利用者・その家族と共にミーティングを行い、よりよい介護を目指していきます。ケアカンファレンスはケアマネジャーが運営役となって行います。ケアプラン作成の原案の段階で、利用者・その家族、介護サービスを提供する事業者、介護サービスにかかわる担当者、医師などが集まってケアプランを検討していきます。
ケアカンファレンスでは、各々の立場から意見を述べることで、利用者一人ひとりのQOL向上を目指しています。
11、ケア記録
ケア記録の一番の目的は、利用者の状況を把握し、提供した援助内容が分かるようにすることです。残したケア記録は、介護するチーム全体で、今後、援助をすすめていくために活用されます。ケア記録を残すことで、サービスの担当者が交代したときでも、記録をみることで援助を継続しやすくなります。
また、ほかにも今後の利用者に対するより良い援助・サービスにつなげることができます。よりよいケア記録を残すためには、利用者の行動を細かく観察し、利用者の求めていることを的確に捉えようとする姿勢が大切です。また記録を残す際は、逐一記録や要約記録など、目的にあわせて書き方を選択すると良いです。ときには、利用者の発言した言葉を記録しておくことも求められます。
12、介護の助言と指導
介護福祉士は、専門的な知識と技術を持って、日常生活が困難な高齢者などの援助をするのが仕事です。介護福祉士は、食事介助、排泄介助、入浴介助、衣服の着脱介助、移動の介助、リハビリテーション、レクリエーションなど、様々な介護に関する専門知識を持っています。これらの専門知識を活かして、介護する家族の相談にのったり、ホームヘルパーの指導を行うことも大切な仕事です。
たとえば、寝たきりの利用者を寝返りさせてあげる介助は、どのようにすると利用者の苦痛にならないか。また、どのようにすれば介護者にとっても負担にならずに寝返りさせることができるか、などといった具体的な知識や技術を、介護する家族やホームヘルパーなどに指導してあげるのです。ときには、介護する家族から介護相談を受け、専門知識を活かした援助方法や介護方法の指導をすることも必要です。
次に、職場別に主な仕事を見て行きます。
①特別養護老人ホーム、老人保健施設、デイサービスセンターなど高齢者施設
ケアマネジャーや家族と連絡を取り、入所・通所の受け入れや、入所者からの相談を受けるのが主業務です。そうした相談、受け入れ業務に専念できる施設もあれば、介護職と同じように入所者の介護にあたる、事務職のサポートをするなど、「何でも屋」のようになる施設もあります。
②病院
医療ソーシャルワーカーとして、入院患者やその家族からの相談に対応します。入院費の支払いについて、退院後の生活支援について、介護保険の利用についてなど、相談は多岐にわたります。
③民間の有料老人ホーム
特別養護老人ホーム、老人保健施設などと同様に、入所受け入れや相談が主業務です。
④地域包括支援センター
地域の高齢者の実態把握、高齢者虐待への対応などを含めた相談支援業務、権利擁護への対応などを担当します。
⑤社会福祉協議会
地域住民参加のボランティア活動の推進や、地域住民からの相談に対する援助などを行います。
⑥身体障害者更生施設などの障害者施設
指導員として、障害者の生活指導や職業訓練のサポートを行っています。
⑦更生施設などの生活困窮者施設
アルコール依存症や重複障害者など、身体上または精神上に障害があり、ひとりで生活できない保護が必要な人たちに対して、日常生活上のケア、生活指導などを行っていきます。
⑧児童養護施設、母子生活支援施設などの児童福祉施設
児童指導員や少年指導員として、入所している児童に学習や生活全般の指導を行っていきます。
⑨福祉事務所、児童相談所などの行政機関
公務員試験を経て、社会福祉職や一般行政職として勤務しているケースです。